学問のすすめ
●学問には目的がある
- 人は同じ権利を持ち身分の上下はなく生まれているはずなのに、格差が存在する
- 格差は学問ができるかどうかの違いで生まれる
- ここでいう「学問」とは普通の生活に役立つ実学のこと
- 「自由」と「わがまま」の境目は他人に害をあたえるかどうかの違い
- 自分のお金で好き勝手やれば他人に害を与えることはないという考えは違う。その行動を他人が真似してしまうと全体に悪い影響が及ぶ。
- 自由独立は個人だけではなく、国にとっても大事である
- 全員が地球市民であり、学びあい、助け合いを行う必要がある
- 他国からやられてしまうような場合には命を投げうってでも威厳を守るようにすることが、一国の自由独立ということ
- 身分によって格差は生まれないが、その人の才能や社会的役割によって位がきまる
- 政治家や官僚を軽んじないことはその人の身分が偉いからではなく、国の法律を扱う仕事をしているから。
- 個人ではなく法律が尊いということ
- 政治家や官僚を軽んじないことはその人の身分が偉いからではなく、国の法律を扱う仕事をしているから。
- 政府に不満があれば抗議の手段をとって遠慮なく議論をするのが筋である
- 自分の一命をかけて争うことは国民のなすべき義務である
- よい民の上にはよい政府があり、愚かな民の上には厳しい政府がある
●人間の権利とは何か
- 学問とは教養をつけることで物事の道理をつかみ、人としての使命を知ること
- ただ本を読んで知識をつけても実際に行動するための経験などを身に着けていなければ意味がない
- 中国の歴史を学んでも、現在の日本の米の値段を知らないのは実生活の学問に弱い人間
- 実生活も学問であり、実際の経済や流行も学問である
- 政府は悪人を罰し、善人を守ることが「商売」だが、政府には金もないので国民から税金を出してもらって補うことで、双方相談を取り決めた。
- なので、国民は税金を払って法律を守れば社会的責任を果たしているといえるし、政府は税金を正しく使い、国民を守れば責任を果たしたといえる。
- 日本にいるものは日本の法律に従うことを約束している
- 法を守らず、食って寝るしかできない「バカ者」には、道理をもって扱うことができず、暴力的に解決するしかない
- もし暴力的な政府を避けたいのであれば、自分の才能や人間性を高めて、政府と同等の地位にのぼるようにしなければならない。これが学問をすすめる理由
➌愛国心のあり方
- 国同士も個人と同じく対等である
- 国民に独立の気概がなければ一国が独立する権利を十分に展開することができない
- 独立とは自分を自分で支配し、他人に依存する心がないこと
- この国に住み、寝て、食べてということは自由にやる権利がある。そしてその権利がある以上、それに対する義務がある
- 国内で独立した立場を持っていない人間は外国人と接するときも独立の権利を主張することできない
- 独立の気概がないものは人の権威をかさに着て悪事を働く
- 独立の気概がないものは扱いやすくて便利といって油断してはならない
- 国民を束縛して政府がひとり苦労して政治をするより国民を開放して苦楽を共にした方がよい
❹国民の気風が国をつくる
- 国を整備して充実させていくのは国民と政府が両立して初めて成功することである
- 国民が政府の働きに任せて何もしなくなれば独立は1日ともたない、何事もバランスが必要なのである
- これまで政府は日本を良くしようとしていたが、国民の無知によって成長できなかった
- 優秀な人も気風に縛られて仕事がうまくできない
- 国民の気風を一掃するには、自分自身で事業を興し、国民の手本となる人物が必要
- 政府は命令する力があるだけ。諭したり、見本をみせたりするのは民間でやることなのである
➎国をリードする人材とは
- 日本がこれまで独立を失わなかった理由は、鎖国などで外国と交わることをしなかったから。
- 外国との交友関係ができた昨今、その文明の差が開いていることが顕著に表れる
- 「文明」は、形のあるもので評価されない
- 学校、軍隊、工業などは金を出せば作れる
- 「人民独立の気概」こそが真の文明精神である
- 今までは政府がすべてを決めて、人民はそれに従うだけだったので、現在のような日本の気風がある
- 「形としての文明」は進歩してきたが、真の文明である「人民独立の気概」は退歩し続けている
- 国の文明というのは「上の政府」からではなく、「下の庶民」からではなく、中間から興るもので、庶民に向かうべき方向を示し、政府と並び立ったところで成功を期待すべき
- 海外での鉄道や商売の方は学者や経営者が発展させてきた
- 文明を行うのは人民であり、政府はそれを保護するのが役目である
➏文明社会と法の精神
- 個人で悪人と戦うのはコストがかかりすぎるので、国が代理で善人の保護をするようにしたのは政府と国民の約束である
- よって国民は政府の方に従うというのも約束であり、政府が作った方に従うのではなく、自分たちが作った方に従うということである
- 国民は悪人を裁く権利を政府に委託する約束をしているのだから、自ら悪人を裁くことがあってはならない
- 本人にとって親が殺されたといっても国からは「人を殺した罪人」として裁くのであって自分で罪人に手を出してよい道理にはならない
- 不便な法であっても、厳格にその方を遵守しなければならない
➐国民の二つの役割
- 国民には「客の立場」と「主人の立場」の2つ役割がある。
- 会社と同じようなもので、100人で会社を作ってルールを作ったのであれば、ルールを作った100人は主人といえるし、ルールに従う100人は客であるといえる
- 税金を払うだけで、政府から保護をもらえるなんてお得なことはない
- ダメな政府だった場合、「身を犠牲にして正義を守る」というのが上策
➑男女間の不合理、親子間の不条理
- 人間には心身の自由があり、下記の五つを操ることができれば個人として自立することができる
- ①身体を使って目的を達成する
- ②知恵を使って道理を発見する
- ③人間は欲を持っていて、欲のために働く
- ④人間は他人に害を加えないように欲を抑制する良心をもっている
- ⑤人間は意思をもっていて、すべては意思から生まれる
- 独立とは孤独ということではないし、友人は必要
- 人間であることの分限を間違えずにいれば、他人に何かを言われる筋はない。
- 腕力で勝負すれば男が勝ち、女が負ける。これが男女の違いであって他に違いはない
- 親孝行は自然な誠実さで行うことで、親が強制することではない
➒よりレベルの高い学問
- 人間の心身の働きは「一個人としての働き」と「社会的交わりの中での社会人としての働き」に区別する
- 「一個人のとしての働き」は衣食住の満足を得ること
- 仕事をしながら周りに迷惑をかけずにそれなりの衣食をして家を建てて子供を育てて・・・といった人生はただ生きただけで、動物と同じなのではないか?
- 人間は社会的動物で、広く他人と交際することで幸せを感じながら人間社会が生まれた。そして、社会の一員となったからには、それに対しての義務がある
- 土地や財産などは使ったらなくなってしまうが「文明」は世界中の過去の人々が私たちに残してくれた遺産であって、土地や財産などとは比べられない価値がある
- 現代人は過去の人々から文明の遺産を受けた最前線にいるのだから、その限界を作ってはならない
- 私たちの仕事というのは、生きた証ということを残して、それを長く後世の子孫に伝えること
- 勉強して稼いで結婚して・・という人生は他人に害さないだけで、他人にプラスになるようなモノではない
➓学問にかかる期待
- 現代の学問は少し勉強すればすぐにお金に換えられる職に就くことができるので、レベルが低くなっているのではないか?
- 衣食住を他人に頼らず生きるのは「内での義務」であって、日本の独立に対して努力する「外での義務」どちらも果たして独立した日本人といえる
- 事業は国内の仲間ではなく、外国と争うものである
- 早く働いて小さなお金を稼ぐよりも、倹約しながら大成するときを待った方がよい
⓫美しいタテマエに潜む害悪
- 8章で述べた「名分」による差別は必ずしも悪意のある考えから生まれたものではない
- 親子関係のように「愚かな善人(子供)」を目上の人が従わせて様々なことで幸せにしてやろうという考え
- 「名分」は愛や年齢差があるから機能するのであって、理想的な考えではあるかもしれないが、大人同士では実行不可能である
- 「世の中の人間は善人でコントロールしやすい」と勘違いしているから、「名分」は頼りにならない。結局は飼い犬に手を嚙まれて終わる
- 「名分」は中身がない議論だが、「職分」に代用することで議論ができるし通用する理屈
⓬品格を高める
- 考えていることを多くの人に伝えるには、その方法がおおいに関係している
- 実際の生活に活かせない学問は学問でないことに等しい
- 人間の品格を高めるためには、物事のようすを比較しながら上を目指し、自己満足しないことが大事
⓭怨望は最大の悪徳
- 欲張り・ケチなどは金を好む心の働きで、ただちに欠点としてみることはできない。道理をはずれなければ倹約や経済的といって美点にもなる
- 他にも欠点を一概に欠点と決めつけることはできないが、唯一「怨望」は誰の得にもならない欠点といえる
- 「怨望」は言論や行動の自由といった人間本来の自然の働きを縛られたときに生まれる
- いかに貧乏で地位が低くても、理由を理解することができれば他人をうらんだりなどしない
⓮人生設計の技術
- 人間は賢い人でも計画通りにいかないし、失敗するものである
- 自分の失敗を続けないために、定期的にうまくいっているかいないかといった心の棚卸をするべき
- 「保護」と「指図」の両方一緒のものだ
⓯判断力の鍛え方
- 疑うことで心理にたどり着ける
- とはいっても物事を軽々しく信じたり、疑ったりするのはよくないから判断力が必要
⓰正しい実行力を身に着ける
- 他人の働きに口を出すのであればその立場になってやってみるのがよい
- 同じ立場になるのが難しいのであれば、なぜ難しいかをよく考えることが重要である
⓱人望との付き合い
- 富豪の帳簿をみればマイナスになっていることもある。それは無一文の乞食よりも金を持っていないということになるが、実際に低い立場にあるわけではないのはその人に人望があるから
- 人望とは腕力や財力ではなく、その人の知力や正直な心で獲得していくものである
- 栄誉や人望は努力して求めていくべき
- 自分の力を世の中に広めるためには下記の三点が必要
- ①言葉での伝え方を学ぶ
- ②見た目の印象をよくする
- ③交際をどんどん広げる