失敗の科学
感想
実際に起きた事故を語り調で表現されているので、ストーリーとして読むのが面白かった。
1章
- 誰もが自分の失敗を隠したがる→自分自身の記憶からも無意識に消してしまい、気付くこともできない。
- 失敗があったとしても原因に気づかず、繰り返してしまうことを「クローズドループ現象」という
- 失敗は特定の人物を責めるための原因ではなく、貴重な学習なチャンスとなる
- 集中力が高まると時間感覚が麻痺する。
- 医療事故の場合、不測の事態に陥った際の担当医は簡単ではないが、ベストな解決法を模索していると時間があっという間に過ぎてしまい、患者さんが手遅れになってしまった。(看護師は時間の問題を把握していたが、上下関係から主張ができなかった。)
- 航空業界では、立場に関係なく発言したり、意見を受け入れるためのトレーニングを行ったことで事故率が低下した。
- 失敗を学ぶことがコスパが良い(失敗の責任と比較)
- 自分で「答えがわかっている失敗」と「答えがわからない失敗」がある。
- 「答えがわかっている失敗」はシステムの改善に役立つ。
- 「答えがわからない失敗」は発明や発見を促す。
- データからは発見できない失敗もある
- 何にでもあてはまるもとは科学ではない
- 星座占いは「間違い」がない。だからこそ多くの人が信じ込んでしまう。
- 失敗することが不可能な仕組みのモノは何からも学べないということ。
- 結果がわからなければ訓練や経験の意味はない。
- 1万時間ゴルフを練習すれば上達するが、暗闇の中で行っていた場合は改善するためのデータが得られないので上達しない。
- 成功の影には多くの失敗があり、それらの失敗を学ぶことが学習の近道にもなる。
- 失敗から学ぶには①システム、②スタッフの2点が必要
- システムを用意しても働く人のマインドセットが失敗に対して消極的だと機能しない」
- 情報はわかりやすい形にならなければ浸透しない
2章
- 警察や裁判官はクローズドループに陥りやすい
- もし、刑務所送りにした犯人が無実の人間だったら?一生を台無しにしてしまったら?
- DNA鑑定が捜査に導入されてから多くの冤罪が証明された。
- 人は失敗を認められない
- カルト予言をしていた人の予言がはずれても信者はさらに信仰をする
- 「予言のおかげで未来が変わった」など事実の解釈を変えてしまう。
- 「認知的不協和」から解釈を変えることで自分は正しい人間だと思いこめる。
- 自分の間違いを認めるのはかなり難しい。
- 努力や思い入れがあるほど認知的不協和にハマってしまう。
- 組織の上層部に行けば行くほど、失敗を認めなくなる。
- 記憶は変わってしまう。
3章
- 初めから正解を考えるよりもあえて失敗を繰り返して正解に近づけたほうが良い場合もある
- 生物の進化は計画されるものではなく、世代を重ねて変化していく。
- 自由市場における企業の倒産も進化のプロセスと同じで、必要な結果である。
- 誰でも失敗しない、成功するという市場はうまくいかない
- 科学ではなく、実践や経験から発明されることもある。
- 量をこなすことが重要。
- 「素晴らしいミュージシャンになるために、ひどい曲をたくさん演奏しよう」
- まず価値があるのかを見極めることが重要
- 「dropbox」は最初からサービスを作らずに、使用感がわかる動画を作成してユーザーの反応をみた
- RCTという検証試験をすることで制度の高い検証することができる
- RCTはテストを「xxを行うグループ」と「xxを行わなかったグループ」を比較して検証すること
- WEBサイトのデザイン変更で売り上げがあがったように見えたが、デザインを変えていなかった場合でも売り上げがあがったかもしれない
4章
- RCTは規模の大きい問題では実施が難しい
- アフリカへの経済援助の効果で実施しようと思ってもアフリカ大陸は一つしかない
- 問題を小さく分解して実施するのが「マージナルゲイン」という考え方
- アフリカへの経済援助の政策を分解し「教科書配布」をアフリカ内の学校で比べる
- あるスポーツチームは「選手が使用する枕の固さ」「ユニフォームを洗う洗剤の種類」など、分解してより良いパフォーマンスが得られるデータを集めている
- RCTは「xxを得るグループ」と「xxを得ないグループ」に分かれるため、平等ではないという批判があるが、答えのないまま進み続けても誰も助けることはできない
- googleは年に1万件以上のRCTを行っている
- デザインに使う青色の変更に41種類の青色をRCTテストを実施した結果、青色の変更のみで年間200億円の利益が生まれた
5章
- ミスは、①学習のチャンス、②ミスに対して責めないオープンな組織文化を構築するチャンスをもたらす
- 規律の厳しいチームではミスの報告件数と実際に発生しているミスの件数が異なっていた
- ミスに対しての厳しい処置はスタッフにとって「貴重な情報は隠しておけ」というメッセージになる
- 規律の厳しいチームではミスの報告件数と実際に発生しているミスの件数が異なっていた
- 「責任をとらなければならないミス」と「偶発的なミス」の境界線の線引きは不可能
- 「処遇を判断している責任者をスタッフが信頼しているか」が一番重要
- 人間の脳は一番単純で直感的な結論を出す傾向がある
6章
- 失敗はかならず成長に必要なものと考える「成長型マインドセット」
- 生まれつきの才能や知性が成功を左右すると考える「固定型マインドセット」→成長が遅い
- 成長型マインドセットの人は自分の欠陥を晒すことに抵抗はなく、合理的に諦める
- 日本は失敗が不名誉なものと見なされる傾向が強く、起業する人の割合が少ない。
- イギリスとアメリカでは数学を「できる」か「できない」かのどちらかという考えが一般的で習熟度が低い
- 逆に数学はやればできると考えている中国や日本では習熟度が高い
終章
- 自分が間違った判断をすることがあると受け入れる
- 自分が間違った方向に進んでいると知る手段を作る
- 客観的なデータを参照して自分の判断の是非を問う機会を作る
- 「事前検死」という手法はすでに「失敗したプロジェクト」として理由を考察すること