インビジブル・インフルエンス
●はじめに
- 人の行動は99.9%他人の行動によって方向づけられている
- 人は、「他人には社会的影響力が関係している」と思っても自分には関係のないことだと感じてしまう
- より多く目にした人の方が魅力的に見える
- 大学の授業で同じクラスの子と、そうじゃない子では同じクラスの子の方が人気だった
- マイナス意味の単語を目にした後に文章を読むと、文章がマイナスなイメージになる
➊まねが生み出す同調の力
- 答えが明らかな場合でも人は他人の真似をしてしまう
- 集団でいるときは答えが明白な場合でも間違った答えに流されてしまう
- 流されてしまった後もその答えが正解なんだと信じ込んでしまう
- 生まれ育った環境や周りにいた人々が自身の言葉からふるまいまであらゆるものを規定する
- なぜ他人に同調してしまうのかは「他人を情報源として利用した方がコスパがいい」から
- ペットと同じ犬種を飼っている人に聞けばペットフード選びに役立つ
- 集団の一員であるため
- 自分がデザートを頼みたくても周り全員がいらないといったら頼まない
- 人は自分と同じ見た目の人を好きになる
- 自分の感情は独立していない。周りが楽しい話をすれば楽しくなるし、悲しい話をすれば悲しくなる
- 夫婦は同じ感情を長い時間共有することで顔が似てくる
- 人の喋り方や動きを模倣することで信頼関係を作ることができる
- 交渉の実験では模倣したグループの方が5倍もよい交渉を行えた
- 専門家でも良い作品を見分けることができない
- ハリーポッターは最初どの出版社も扱わなかった
- ヒットは質もあるが、場合によっては運と群衆が決める
- 音楽の実験では、最初に聞いた数人の評価が、後の多数の評価に影響する
- 賞罰は短期的には有効だが、本質的な解決にはならない
- 野菜を食べたらお菓子をあげるという教育をした場合、野菜はよくないものという扱いになってしまう
- 親が美味しそうに野菜ばかりを食べていれば、子供は野菜を好んで食べるようになる
- ウェイターが客の注文を繰り返すだけでチップが70%増えるという調査もある
- 会話だけではなく、メールにおいても相手の言葉やしぐさを自分も使うだけでスムーズに進めることができる
- 集団の意思決定では、「グループシンク」といって集団の中で調和を求める気持ちにより、よくない意思決定をしてしまうことがある
- 影響力に左右されないためには意思決定は一人で行うのがよい
- 会議は投票形式または事前にそれぞれの意見を個別に聞くことでさまざまな意見がでる
➋その違いが決定的
- トップアスリートは兄弟の2番目以降が多い
- 同じ競技をしているとは限らない
- 兄弟がいることで、模倣と差別化が促進される
- ほとんどの人が自分一人だけで何かをするのは嫌だと思うが、あまりに同じことをする人が多いと、次に進んで別のことをしたくなる
- 好きなアーティストが大人気になると、「昔の方がよかった」という
- 人は何かを選ぶときに、他人とは違う感じを出そうとする
- 人と全く同じの服装になったら気まずい
- 実用性を感じなくても最新のツールを手に入れようとする
- 「違い」は何かを定義づけるものとして価値が高い
- 大人になるとは「自分を定義づけること」
- SNSのプロフィールに職業や主張、役割を書いたりする
- 反抗期は親とは違う人間になるために、自分らしさを手に入れるために反抗的になる
- 人は他人とは違うところに目を向けて「自分は人とは違う」と思いたがる
- 同じ種類のバッグを持っていても、「色が違う」「素材が違う」という
- 人と違うことを「好む層」と「好まない層」がある
- 労働階級の人々は人と同じになることに抵抗がない
- 社会経済学的なステータスではなく、文化によっても変わる
- アメリカのことわざに「きしむ車輪は油をさされる」とあるが、日本のことわざは「出る杭は打たれる」と反対の意味になる
- 個性は「正しい正しくない」の問題ではなく、「文化的背景による好み」の問題
- スタバは人との差別化を感じさせてくれる空間にしている
- 社会的影響力を認知して選択を行うことで自分が幸せになれる。もし、影響されやすいのであれば一番最初に選ぶことが大事
➌あいつらがやっているならやめておこう
- アバクロは自社ブランドを着てもらわないようにお金を払っていた
- 人を選ぶときは見た目などの情報だけでその人がどんな人かを予測する
- ベビーシッターが「ハーゲンダッツ」を買うか、「安物のアイス」を買うかでその人に頼みたいかが変わる
- アオガエルは自分よりも大きいオスがテリトリーに入ってきたらわざと低い声で鳴いて自分を大きいカエルだと思わせるし、人間も同じように同窓会にベンツを借りていったり、大きく見せる行動をとる
- 自分を大きく見せる行動を全員がとりだすと意味が変化していく
- アウトドア好きが来ていた「ノースフェイス」の服も、みんな着だすとアウトドア好きに見えなくなってしまう
- 好きなインディーバンドのTシャツを着ることはメッセージを発するが、着る人が多くなってしまうと価値を失う
- 「レディースカット」という名付けられたサイズのステーキを大半の男は頼まないが、「シェフズカット」と名付けられた途端に頼めるようになる
- 人は他人が「何をしているか」だけではなく「何人がしているか」、「誰がやっているか」も意識している
- 黒人のコミュニティでは勉強で高い点数を取るだけで「白人のマネ」というようなレッテルを張られてしまう
- 科学で女性の研究者が少ないのは「科学=オタク」と認識があるから
- 違いが意識されるのは選択が人のアイデンティティに結びつくモノに限られる
- 機能面を減らせばアイデンティティを示す強力なシグナルとなる
- 例えば時刻が分からない時計やブレーキのない自転車
- コストをかけることがアイデンティティにつながる
- 例えば筋肉を増やしたり、何かに詳しくなったりすることは、糖質制限や勉強する時間といったコストを払っていることになる
- モヒカンにするコストは高すぎるが、それだけ持続的に価値を持ち続ける
- 安価な商品はブランドが特定できないが高価になるほどブランドロゴがついていたりする。しかし、さらに高価になると、ブランド表示は控えめになる
- ロゴが大きいものはコピーしやすく、マネされやすいので、詳しい人々はさりげないシグナルを好む
- 偽物を流通させることで消費者に新しいシグナルを求めるように促す
- 若者の流行を中年がマネしだしたら廃れてしまう
❹似ていたいけど違っていたい
- 人は目にする機会が多いものに自然に好感を抱く
- 人は馴染みのあるものに親しみを感じる一方で目新しいものを好むという矛盾した気持ちをもっている
- 毎日同じ服や食べ物ではつまらないと感じてしまう
- 新しいものに挑戦することは有用な情報を手に入れる機会となる
- 「クーリッジ効果」=オスは何度も交尾をした後、興味がなくなるとメスからアプローチしても交尾をしようとしたがらないが、違うメスがアプローチすると再び興味を示す
- 類似性が人気を生み出すのはそれによって新しいものに親しみの感覚がプラスされるから
- シンプルで新しいものは即時に訴える力を持つが飽きられやすい
- 複雑なものは熟するまでに時間がかかるがアピールは長続きする
- あまりに斬新だと親しみが感じられない
- あまりに親しみすぎると退屈に感じる
- 人は人と程よく違うことを選ぶ
- 友達と同じブランドを着るが、少しスタイルが違うものにする
- 同僚と同じ形のソファーを買うが、色が違うものにする
- 来年の流行は誰にも分らないが、でたらめに起こるわけでもない。
- 「黒」の次に流行る色は「ダークグレー」といってもそこそこ妥当
- 類似性と相違性をうまく組み合わせるのはイノベーションの管理にとても重要
- デザインとテクノロジーが組み合わさって、初めて消費者に認識される
- イノベーションだけでは評価されず、程よく違っていることを見せる工夫が必要
➎やる気に火をつけるもの
- 近くに誰かがいる方がパフォーマンスは向上することを「社会的ファシリテーション」と呼ぶ
- 犬は他の犬とペアになったほうが早く走る
- アリは他のアリがいると3倍も速く砂を掘る
- 課題が複雑になると、他人がいることでパフォーマンスが低下する
- 縦列駐車を人に見られていると難しく感じる
- 他人に後れを取っているということは、良いパフォーマンスを出すための動機づけとなる
- 節電を訴えるとき、「環境問題」や「節約効果」よりも「ご近所さんが節電している」と伝えることが一番効果があった
- バスケの試合は「前半で1点負けている」方が最終的に勝ちやすい
- 自分がずっと後れを取っていると感じるときは、逆にパフォーマンスが低下する
- テニスの試合では、バスケの試合と反対に前半で負けていると負けが多くなる
- 多くの企業は学校で採用されているのは「勝者がすべてもっていく」という評価方式
- この方式は勝ち目がないと思ってしまう人が増えてしまう
- 比較の対象を分割して少ない状態に保つことで自分のレベルと近い者同士で比較することができ、モチベーションを維持しやすい
- オバマの大統領選挙ではディレクター経験豊富な人材ではなく、ディレクター補佐などを登用した。彼らは少し遅れているという自覚をもっていた
- レンタカー会社は「自分たちはナンバー2だから頑張るのだ」と主張していた
●おわりに:社会的影響力を味方にしよう
- 貧困率の高い地域に住む子供は、言語能力やIQ、読解力などさまざまな面で損をしている傾向がある
- 貧困の少ない地域に移住したことで大人も子供もさまざまな面が大きく改善した